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漫画「イキガミ」について
2008年9月18日
星マリナ


 小学館から発売されている漫画「イキガミ」について、お話したいことがあります。長くなりますが、要点は以下です。



(1) 「イキガミ」は、星新一の小説「生活維持省」に似ていると、ネットなどで指摘されていますが、原作許可を求められた事実も、許諾を与えた事実もありません。
(2)  似ているのは、著者が星新一ファンだからなのではないかとも考えましたが、小学館と著者の説明によれば、そうではなく、したがって「イキガミ」は星新一へのオマージュ作品というわけではありません。
(3)  日本の法律では、小説の著作権は、作家の死後50年守られることになっています。



 私は、この件について今年の4月より小学館へ問い合わせ及び抗議を続けてきました。その経緯及び私の意見をお話します。

 今年の4月、「イキガミ」という漫画が星新一の初期の作品である「生活維持省」にとてもよく似ているという話を友人に聞き、自分で「イキガミ」を購入して読んでみました。そして、やはり似ているという印象を受け、新潮社を通して小学館へ問い合わせをしてもらいました(4月22日)。

 それ以後、何度か小学館に質問状を送り、そして小学館から回答をいただくことを繰り返しました。「イキガミ」の担当編集者からの回答(5月2日)、「イキガミ」の著者の間瀬元朗氏と掲載誌「ヤングサンデー」の編集長からの回答(7月2日)、そして掲載誌「ヤングサンデー」編集長からの回答(8月4日と8月29日)を私の理解した範囲でまとめると、以下になります。

(1)  2005年に両作品が似ているという指摘があったと日本文藝家協会から連絡を受け、その後、比べてみたけれど問題ないと判断した。
(2)  もし似ているのであれば、それは偶然の一致であり、「イキガミ」関係者が事前に「生活維持省」を読んだという事実はない。
(3)  偶然なのであるから、「イキガミ」関係者に非はない。

 ここで、「生活維持省」と、「イキガミ エピソード1」の似ていると思われる部分のあらすじを、私の責任においてまとめ、紹介したいと思います。


生活維持省
舞台となる国には、国民の命をランダムに奪うことによって人口を抑制し、それによって国民の生活水準を高め平和を保つという法律がある。その法律を施行する生活維持省に勤める、若くて独身の男性公務員が主人公である。彼は、上司である課長から、その日の死亡予定者の情報が書かれたカードを数枚受け取る。同僚と車に乗って死亡予定者の家へ向かいチャイムを押すと、母親が玄関へ出てくる。公務員が、その家の娘が国家によってランダムに選ばれた死亡予定者であると告げると母親が動揺する。母親は、公務員の説明を聞き、苦しみながらも娘の死を受け入れる。公務員は、この家の娘を殺害しなければならない。

イキガミ エピソード1
舞台となる国には、若い国民の命をランダムに奪うことによって国民に命の尊さを教え、それにより国家の繁栄を保つという国家繁栄維持法という法律がある。その法律を施行するのは、厚生保健省である。「イキガミ」の主要登場人物は、区役所に勤める、若くて独身の男性公務員である。彼は、上司である課長から、その月の死亡予定者の情報が書かれたカードを数枚受け取る。車(タクシー)に乗って死亡予定者の家へ向かいチャイムを押すと、母親が玄関へ出てくる。公務員が、その家の息子が国家によってランダムに選ばれた死亡予定者であると告げると母親が動揺する。母親は、公務員の説明を聞き、苦しみながらも息子の死を受け入れる。この家の息子は、公務員の告知24時間後に事前に体内に埋め込まれたカプセルが破裂して死亡する。
(あらすじ以外の類似点はこちら)


 「生活維持省」は、星新一の小説の中でも読者の評価が高い作品です。「生活維持省」は、現在までに以下のような形で発表されています。

1960年11月 雑誌「宝石」に掲載 (直木賞候補)
1961年2月 単行本「人造美人」(新潮社)に収録
1971年5月 新潮文庫「ボッコちゃん」に収録
以来、現在まで重版がつづき、累計240万部
2003年4月 志村貴子氏によって漫画化された漫画版「生活維持省」が雑誌「ミステリーボニータ」に掲載される
2003年7月 漫画版「生活維持省」 単行本「コミック星新一 午後の恐竜」(秋田書店)に収録
以来、現在まで重版がつづき、文庫「コミック星新一ショー トショート招待席」にも収録予定(10月10日発売)
2008年4月 青地良輔氏によって映像化されたアニメ版「生活維持省」がNHK「星新一ショートショート劇場」で放送される
2008年7月 有馬あきこ氏によってオーディオブック化された「生活維持省」が、ドコモの携帯サイトより発売される
日本語版朗読 宮野真守氏
英語版朗読 パトリック・ハーラン氏

アニメ版「生活維持省」 好評につきNHKで再放送
2008年9月 オーディオブック版「生活維持省」 iTunesを中心に国内外で発売予定



 今回、私の主張していることを多くの方に正しく理解していただくために、当サイトで本日より3か月間、小説「生活維持省」の全文を無料で閲覧できるようにしました。(小説の全文は、こちら

 「イキガミ」には、漫画版の「生活維持省」に似ていると思われる部分がいくつかありますが、その中からひとつ挙げるとすると、「生活維持省」の扉絵と「イキガミ」単行本の表紙です。どちらも公務員が死亡予定者の名前の書かれたカードを片手で持っている絵です。

 小説の「生活維持省」では、公務員は、死亡予定者を光線銃で撃ち殺しますが、漫画版では、公務員は小さな錠剤を死亡予定者に飲ませます。この小さな錠剤を体内に入れるという部分が、「イキガミ」の小さなカプセルを体内に埋め込むという設定に似ているように思います。


 一方、「イキガミ」は、現在までに以下のような形で発表されています。

2005年1月 「ヤングサンデー」にて「イキガミ」の連載開始
2005年8月 単行本「イキガミ」(小学館) 第1巻発売
以後、現在までに5巻発売
2007年9月 「イキガミ」 映画化決定 (2008年9月27日公開予定)


 「ヤングサンデー」編集部の説明によると、「イキガミ」は2004年8月に同誌に掲載された同著者による読みきり漫画「リミット」が好評だったために、連載をスタートした作品であるということです。私は、「リミット」も読んでみましたが、「リミット」の世界も「生活維持省」と似ているという印象を受けました。

 「イキガミ エピソード1」と「生活維持省」の似ている点が、小学館側の回答にあったように偶然の一致であるならば、「イキガミ」がどのように着想され、作品世界がつくられていったのかということを知りたいと思い、その点についても何度か質問をしてきました。けれど、先方からは戦時中の赤紙からヒントを得たという回答があっただけでした(「赤紙 男たちはこうして戦場へ送られた」創元社 小澤真人・NHK取材班著)。ほかにも、著者と編集部が参考にした書籍があるということでしたが、具体的な書名は現時点では明らかになっていません。

 小学館への問い合わせ及び抗議をするにあたり、インターネットで検索できた意見にはほとんど目を通しました。100名以上の方が、何らかの形でこの件について発言してくださっていました。早い時期から問題提起をしてくださった方たちには感謝しています。

 残念ながら、私としてはまだ納得できていませんが、この文章の掲載をもって私から小学館への問い合わせ及び抗議は終わりにし、判断はそれぞれの読者のみなさまにおまかせしたいと思います。

 今回、映画公開の直前になって、このような文章を公表することになり、映画関係者に申し訳ないという気持ちはもちろんあります。けれど、小学館に対する問い合わせ及び抗議は4月に始まり、8月29日付けの「ヤングサンデー」編集長の回答をもって、小学館側の説明と主張は出尽くしたと判断しました。星新一作品の著作権という権利を受け継ぐにあたり、それを管理する義務を受け継がないという選択の余地は私にはありません。これは、映画の公開を妨害するものではないということをご理解ください。
 父の本を売ってくださっている出版社の方たち、長いこと応援してくださっているファンの方たち、父の影響を受けたと公言してくださっているクリエーターの方たち、原作使用許可を得たうえで映像化、漫画化、オーディオブック化、海外出版をしている方たち、そして、星新一作品にインスパイアされ、次世代のクリエーターを目指す若い読者の方たち。そういった人たちに対して、私には責任があるのです。

 父が亡くなってから今まで、私たち遺族の著作権管理が充分であったとは思っていません。これを機会に、父の著作権の保護期間が終了する2047年まで、国内外で父の作品を一番いい形で残せるように努力していこうとあらためて決心した次第です。それにあたり、今後も多くの方のご協力をあおぐことになると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 現在、まだ星新一の著作権保持者の名前は母になっておりますが、高齢のこともあり、星新一の次女である私が問い合わせ及び抗議をしてきました。この件について母への取材及び問い合わせはご遠慮いただくよう、心よりお願い申し上げます。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




尚、小学館から、この星新一公式サイトに小学館の見解を掲載してほしいと言われたので、掲載いたします。
小学館の公式見解は、こちら
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