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 寄せ書き 
眉村卓「星新一のショートショート」
作家
 星さんの作品は、文章簡潔で平明である。だから、誰でも同じようなものが書けると錯覚する人が多いようだ。今また読む人が増えてきたらしいから、この前の、と書くが、この前の星ブームの頃、私のところへも、何人かの人が、星作品風のショートショート集を送ってきた。中には、これをこのままの内容で出版したいから出版社に紹介してくれ、との手紙が添えられているのもあったが・・・ 正直、みな星作品の亜流としか思えなかったのである。

 星さんの書くものはああ見えても、随分屈曲している事柄を整理し切り捨てて透明にしているのであり、うかつに真似をすると失敗するのだ。それに星さん自身、自分の作品とは異質な作風を好むところがあったのは、多分、そうした自分の亜流に辟易していたせいではないか。私にはそんな気がするのである。

――というようなことは、今更、と言われるに違いない。だが私はこれに加えて、もうひとつ、見方を述べてみたい。

 その道に通じた人にはわかり切っていることだろうが、私は何年か前、カードマジックをゆっくり見せてもらったことがある。見せた後、術者は言った。
「見せるときには、何をやるかを決して喋ってはいかんのです。相手がこれを知っているなと思うと、避けて、違う方向へ行き、また外し、という具合に持って行って、意表をつくのです」

 カードマジックのことはわからないけれども、私は、何だかショートショートの語り方に似ているなと思った。一直線に行かないのなら、当然、そうならざるを得ないであろう。そしてそこで私が頷いたのは、星作品が、最後のオチに持ってゆく前に、いかに工夫をしながらその過程をつないでいるか、の巧さにも支えられているのだ、ということだったのである。


2010年9月

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