DBジャパンより刊行されている『星新一作品 登場人物索引』（以下『登場人物索引』）は、星ライブラリが公認または許諾している書籍ではありません。

星ライブラリは、星新一の著作権をはじめとした文学的遺産を管理し運用しています。 小説のタイトル、登場人物、設定およびストーリーは、すべて作家の創作物であり、登場人物の設定を要約してならべただけの書籍が、なんの問い合わせもないままに営利出版されたことは遺憾と言わざるを得ません。

また『登場人物索引』には、看過し難いものだけでも以下に掲げる問題点があります。 読者・利用者のみなさまには、ご注意いただきますようお願いいたします。

① 作者の意図が反映されていない

〈イヤリング〉〈物体〉などが「登場人物」として扱われているのに、〈女性歌手〉〈領主〉などが登場するショートショート15編は、「登場人物無し」という理由で除外されています。 意思や個性の有無とも関係なく、たとえば、ともに『つねならぬ話』収録で設定も似ているのに〈花〉は「登場人物」で〈竹〉はちがうなど、「登場人物」の選択は作者の意図が反映されたものではありません。

② 作品リストは既存リストの流用である

『登場人物索引』の作品リストは、新潮社刊『星新一 ショートショート1001』（通称・全集）巻末の作品リストに、出版芸術社刊『気まぐれスターダスト』収録の26編と、樹立社刊『星新一 ショートショート遊園地』に初収録した2編を追加したものです。 それは、先日の更新前に本サイトのあいうえお順ショートショートリストに記載されていた作品と同じということです。 （リスト作成と更新の経緯参照）

③ 全作品を網羅しているわけではない

『登場人物索引』は、「星新一の全作品の登場人物」を謳っていますが、新潮文庫『つぎはぎプラネット』（刊行順リスト303番）に初収録したショートショート56編と、角川文庫『きまぐれ博物誌』（同35番）収録の時事ショートショート5編、そして長編・中編などはふくまれておらず、それらへの言及もありません。

④ 作品リストが索引として機能していない

『登場人物索引』の作品リストでは、利用者を全集へ誘導しているにもかかわらず、全集の巻名しかわかりません。 1049編のショートショートが全3巻に収録されていますので（平均350編）、たとえば「愛の鍵」が全集の第1巻収録であるとわかって第1巻の目次をひらいても、すぐには見つからず、ページ番号なしでは索引の意味がありません。 全集の巻末には、タイトル・所収文庫・巻名・ページ番号をまとめた使いやすいリストが最初からついているのですから、そもそも全集をもっている方に別途作品リストは不要なのです。
また本書の作品リストには、理論社の児童書シリーズも所収本として記載されていますが、単行本全37巻のうちの最初の2巻（『きまぐれロボット』『へんな怪獣』）が抜けていて混乱します。

⑤ 所収文庫名がわからない

『登場人物索引』では、『天国からの道』『ふしぎな夢』以外の新潮文庫、そして角川文庫については、もっとも普及している書籍群であるにもかかわらず、いっさい触れられていません。 つまり、「おーい でてこーい」は新潮文庫『ボッコちゃん』に収録されているというような、基本的で有用な情報が、本書ではわからないようになっています。

今後、このような書籍の刊行を企画される方は、お問い合わせのフォームより、事前にご連絡いただきますよう、お願い申し上げます。


なお、この機会に以下のリストを更新・作成しました。ご活用ください。
▲　ショートショートリスト 更新
2013年より初出リストにのみ掲載されていた『つぎはぎプラネット』と『きまぐれ博物誌』の収録作品61編を、ショートショートリスト（あいうえお順リストから改名）に追加しました。
▲　長編リスト 作成
長編、中編、伝記など、ショートショート以外の作品をまとめた長編リストをつくりました。
（禁無断転載）