ショートショートという魅力的な小説ジャンルと出会って、40年近く経ちました。
つくづく思うのは、星新一という存在の大きさです。星さんが亡くなられて12年になりますが、その存在感は、私のなかで薄れることはありません。特にショートショートの研究を始めて以降、日増しに大きくなっていくのを感じています。
1978年7月21日(金)
この日、私は初めて星さんとお会いしました。翌日から2日間にわたって、星さんを囲むファンの集いが催されることになっていて、その前夜祭が行なわれる会場(名古屋観光会館)でした。
前夜祭に参加したファンは20数名だったでしょうか。夕刻、待ちわびる私たちファンの前に星さんが姿を現わした途端、大きな拍手が自然と沸き起こりました。
星さんの第一声は「矢野さんは来られないようですな。平井さんが来るとか、電話をもらった」 これが、私が初めて聞いた星さんの肉声です。。
しばらく歓談したのち、私を含めた10名ほどは、星さんとビアガーデン(名古屋の丸栄スカイル屋上)に行くことになりました。初めてお会いした日に一緒にビールを飲む。 なんという幸せなのでしょう。ほろ酔い気分になった星さんの話の面白いこと。感動と言うしかありません。
翌年に催された2回目のファンの集いでは、私は主催者側に回りました。打ち合わせなどで、星さんのお宅に何度もお邪魔し......。さらに作家としてデビューしたあとには、さまざまな場所で星さんとお会いする機会を得ます。
しかし、やはりあの日 1978年7月21日のビアガーデンは忘れられません。
私、20歳の夏でした。
2010年3月
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