寄せ書き
鬼嶋清美「日本SF作家クラブと、星にまつわるものがたり」
一般社団法人日本SF作家クラブ 第24代事務局長
この稿のご依頼をいただいたときは、わたしは一般社団法人日本SF作家クラブの事務局長の職にあったのですが、先日2020年9月の定時総会で新理事の選挙が行われ、新会長に池澤春菜会長(第20代)、新事務局長に榎木洋子事務局長(第25代)が選任されました。
これでわたしは2年間に渡る事務局長職を終えました。
わたしはSF作家ではありません。 それが日本SF作家クラブの事務局長までやらせていただいたのですが、せっかくなのでそのお話をまとめておきます。
日本SF作家クラブには、誕生日が2つあります。 ひとつ目は、1963年3月5日。SFマガジン初代編集長福島正実さんの声がけで、SF作家、編集者など11名で日本SF作家クラブを設立しました。 ここに若き星新一さん(わたしが星さんと書くのはおこがましいと思うのですが、作家クラブ内ではキャリアに関係なく、さん付けで呼び合う習わしなのです)も最初のメンバーとして参加されています。 よく、日本SF作家クラブの面々が旅行に出かけて面白おかしい珍道中を繰り広げた、なんて話が伝説的に語られますが、この最初期の活動のことだったりします。
当初は役職として事務局長のみがおかれ、初代事務局長に半村良さんが就かれました。 のちに会長職が置かれることになり、初代会長に星新一さんが就任……と、わざわざ解説しなくてもここをお読みの方には周知のことでしょう。
ふたつ目の誕生日は2017年8月24日。50年以上任意団体として活動してきた日本SF作家クラブが、一般社団法人として登記をした日です。 日本SF作家クラブがより大きな活動を進めていくには、社団法人となっていかなければならないという議論は長年あったようなのですが、なかなか具体化できませんでした。
2015年9月に第18代会長である藤井太洋さんが就任してから、社団法人化のプロジェクトが本格化し、様々な準備をおこなって、前述の日付2017年8月24日に登記した次第です。
時計の針をそれより少し前に戻します。 日本SF作家クラブが2013年に設立50周年を記念したプロジェクトを開催し、記念のアンソロジーを出版したり、講演など、さまざまなイベントを展開しました。
そのひとつとして、50周年を記念したプラネタリウムの番組を制作できないかと、当時の瀬名秀明会長から友人として、メーカーの営業にいたわたしが打診をうけ、日本SF作家クラブの皆さんとともに制作を行ったのがプラネタリウム番組『未来はボクらがつくるんだ! 22世紀のものがたり』でした。 このとき東京で公開したプラネタリウムの場所からは、首都高目黒線を挟んでTOCビルが見えます。 お察しいただけると思いますが、TOCビルはかつて星製薬の工場があったところです。 『人民は弱し 官吏は強し』を読んでいましたが、星製薬の場所までわたしはきちんと把握していませんでしたので、驚くというか不思議な縁を感じました。
50周年記念イベントも終わったので、これでお役御免と思っていました。 そうしたら、編集者・書評家で、作家クラブのもうひとりの星さん、星敬(ほし・たかし)さんから「日本SF作家クラブに入らないか」とお誘いを受けたのでした。 作家じゃない自分が入れてもらえるのかと驚きましたが、これも縁だと思って、2014年4月に入会となりました。
賑やかしの一人でいいだろうと思っていたのですが、そこに作家クラブの社団法人化の話です。 じゃあわたしでなにかできるならと、藤井太洋会長のもと、社団法人化の準備として、会員への法人化の説明をしたり、定款づくりの手伝いなどをしました。
法人化も果たしたし、今度こそお役御免だろうと思ったら、藤井会長から、次期の事務局長をやってくれないかとの打診を受けたのでした。 そんな大任がつとまるだろうかと思いましたが、社団法人化を果たしたばかりで体制を整える必要がありましたから、かなり悩んだ末に引き受けました。
そして2018年秋から第19代の会長として林譲治会長と、第24代事務局長としてわたしの体制がスタートしました。 作家クラブの公式サイトには歴代会長、事務局長の一覧が掲載されています。 そこにわたしの名前が載ったとき(というか載せる指示を出したのはわたしですが)、これは一体何事だろうか血圧の上がる思いでした。 歴代事務局長の名前として、初代半村良、2代大伴昌司、3代高齋正、4代眉村卓、5代筒井康隆……ときて、その最後に自分の名前があるのですから。
事務局長としての2年間、本当にいろいろありました。 極めつけは先日の2020年4月、新型コロナウィルス感染拡大の影響から、第40回日本SF大賞の贈賞式が開けなかったことです。 わたしをクラブに誘っていただいた星敬さんが2019年12月に亡くなられ、第40回で会長賞をお贈りしたのですが、贈賞式の場で御礼を述べることが出来ませんでした。 本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
しかし林譲治会長をはじめクラブ会員の皆さん、外部の皆さんの有形無形のご協力と、家族のサポートでなんとか任期を無事に終えることができました。
新会長の池澤春菜さんはプラネタリウム番組『未来はボクらがつくるんだ! 22世紀のものがたり』のヒロイン役の声をやっていただいた声優さんですが、書評家、エッセイストとしても活躍されているまさに才女、事務局長の榎木洋子さんはコバルト文庫などで多数書かれたベテランと、安心して次を任せられるお二人です。 きっと新しい時代を作ってくれることでしょう。
ともあれ退任したので、この先に機会があれば、星新一さん原作でプラネタリウム番組を作ってみたいと思います。 あれとかこれとか、やりたい原作はそれこそ星の数ほどあります。 プラネタリウムの星空の下で星新一さんの物語を語るのって、素敵だと思いませんか。
日本SF作家クラブ 歴代会長・事務局長
2020年10月
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