私は高校に勤める傍ら、ショートショートを書いています。
そして、あるコンテストに応募した「異常事態発生」が江坂遊師匠に認められたことをきっかけとして、光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を掲載いただけるようになりました。
そんな私ですが、小学生の頃はバリバリのテレビっ子だったので、本なんて一冊も読んだことがなかったのです。
ところが、中学生になって初めて手にした『宇宙のあいさつ』で、もう夢中に。
実は本を読み始めた時から読書記録をつけているのですが、一冊目の『宇宙のあいさつ』から『おせっかいな神々』『おのぞみの結末』……と、実に十七冊も続いているんですよ、星作品が。
まさに、むさぼり読む状態でした。
名作傑作が数多ある星作品ですが、中でも「ひとつの装置」(『妖精配給会社』収録)が頭の中にこびりついていて離れません。
あのボタン、押してみたいなぁ〜。
星先生は私を読書の世界に導いてくださった大恩人です。
そして今、高校で働いていて思うのは「星先生の発想法は教育に必要だ」ということです。
というのも……
◇
大学に合格すること、それは一つの目標に違いありません。
しかし近頃では、幼い頃から合格だけを目的として勉強させられてきた結果、大学を卒業した後、自分の意志では何もできない人が増えてしまいました。
今の世の中、言われたことをこなすだけの指示待ち族なんて、必要とされないのにね。
これに対して、教育においては「探究」という言葉を耳にすることが多くなりました。
探究とは「ものごとの背後にある秘密や隠された意味などを、調べて解き明かそうとすること」なのですが、このことについては、星先生も言っておられます。
「学問のもとは、好奇心だろうと思う。
つめ込み教育、丸暗記でなく、好奇心を育てるようにしておけば、すぐれた人物も、しぜんに育ってくるのではないか」(『きまぐれ遊歩道』:「空想の楽しさ」から)と。
そして、そんな探究心・好奇心から「新しい何か」が生み出されるのです。
では、新しい何かを生み出すために、具体的にはどうすればいいか。
星先生はショートショートの発想法として「そもそも、アイデア捻出の原則は一つしかない。
異質なものどうしを結びつけよ、である。
常識の殻を破りたいとは、だれでも考えていることだ。
しかし、この殻は非常に強固なもので、いかに待っても自然に割れてはくれない。
異質なものとの結びつきによってのみ可能なようだ」(『進化した猿たち 1』:「死刑をたのしく」から)と言っておられます。
「常識の殻を破る」、これこそが探究学習の目的であり、何かを生み出す力となるのではないでしょうか。
そして、そのためには「考えること」が大切です。
単に言われたことをやっているだけではダメなのです。
最近では、SNS等で「これは良い」と発信されたものが爆発的にヒットするし、逆の場合には一気に炎上してしまいます。
でも、そんな付和雷同する人々に、自分の考えなんてありません。
やはり、自分で考えて行動しないとね。
考える。
それには、若い頃に星作品に触れられたことが、とても役立っています。
私だけではなく多くの人々にとって。
だって、たくさんの読者が星作品から「物事に対して違った角度からとらえる発想の大切さ」を教わったのだから。
今の教育において必要なのは「発想」を生み出すための力をつけることです。
そして、これまでにない「新しいもの」を生み出すには、星先生の発想法が役立つに違いありません。
最後に、今回の結論。
生徒たちに星作品を読ませると、将来、人類に役立つ発明発見のできる人になる!?
2023年2月
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