去年、角川書店さんで星さんのショートショート集を編ませていただいた。星さんの1001編のショートショートの中から、自分の好きなお話だけ選んで、一冊の本にまとめる。これはもう、何ともやりがいのあるっていうか、非常に楽しい仕事だった。
また、去年は、最相葉月さんがお書きになった星さんの評伝『星新一 一〇〇一話をつくった人』が出版されたり、星さんの没後十年にあたるということで、雑誌で星さんの特集が組まれたり、星さんがらみのイベントなんかもやったのだけれど、それで、へーっと思ったことが一つ。いろいろな人が、いろいろなところで、『私の選んだ星新一ベスト』みたいなことをお書きになっているんだけれど、これがもう、ほんっとにバラエティ豊かっていうか、みごとにばらばら。まぁ、みなさん、「ボッコちゃん」「おーい でてこーい」みたいな、誰が選んでも星新一ベストって作品は、故意にはずしたってこともあるんだろうけど、「え、あなたのベストはそれですか」って、非常に楽しませていただいた。星さんのショートショートを集めたお芝居なんかも見にいったんだけれど、そこでとりあげられていた星作品なんて、星さん御本人が御自分の本にいれてなかった奴だったりしたし。
あらためて、星新一の凄さを実感した。1001編という数のショートショートをお書きになったってだけでも凄いけれど、ベストを選ぶと、見事にばらばらになる。それは、作品がそれだけバラエティにとんでいるっていうことでもあり、バラエティにとんだ作品のどれもが、誰かのツボにはまる魅力をもっているってことでもある。
星さんはひとりしかいない。当たり前だけれど、こんな希有な小説家は、多分二度とでてこないと思う。同じ時代に生きて、リアルタイムで星さんのお話を読めて、ほんっと、私は幸せだったと思う。
2008年11月
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