私の年代の人は必ず星新一さんの本を読んでいる。
私も学生時代にむさぼり読んだ。
だが、ただの一ファンであって他の多くの寄せ書きをされた先生のように直接面識があったわけではない。
私は星先生をともに心から敬愛する江坂遊先生の友人である。
江坂先生は、20年くらい前に私が大阪府立特許情報センターというところで特許インキュベーションを立ち上げたときにそこに申し込んでこられた。
特許インキュベーションというのは、ベンチャー企業、新規事業を起こしたいという方に特許について集中的に指導を行ってビジネス化を支援するというものである。
その時、江坂先生が次から次へとビジネスアイデアを出されて、あまりのアイデアの豊富さに私が驚いて、「一体どうやってアイデアを考えておられるのですか?」とお聞きしたら、「私はSF作家で、星新一先生の弟子です」とおっしゃられたので、本当にびっくりしたのを覚えている。
後でわかるのだが、そのときに江坂先生は星先生のアイデア創出法をすでに実践しておられた。
私は特許や著作権等の知的財産が専門であるが、多くの弁理士が行ういかに知的財産を権利化して保護するかよりも、いかに知的財産を生み出すかの方に興味があって、ずっと若い人たちに理科や科学技術にいかに興味を持ってもらうかを考えてきた。
自分でも子供発明教室を行ったり知的財産セミナーを行ったりしてきたが、特許インキュベーションはその過程で考え出したものだったのである。
現在、江坂先生はショートショートの門下生を集めて江坂道場を主催しておられ、このメンバーはスターキッズ(星の子たち)と呼ばれている。
私もその門下生に混ぜてもらってショートショートに挑戦し、小中高生や大学生向けのショートショート教室のお手伝いもさせていただいている。
自分自身が星先生たちのSF小説に感化され科学技術の道に進んだので、SFやショートショートは若者の科学技術コミュニケーションに大きく役立つと信じている。
個人的には、星先生は稀代の天才であって、素晴らしいアイデアと共に短い作品の中に人類への警鐘、人類愛までも読み取れ、道場の中から星先生を越える人は現れないと自信を持っている。
だが人類の未来が豊かに幸福になるアイデアについて星先生に一歩でも近づこうとする努力、活動そのものが、日本の将来を良くするのではないか、さらにはそれらをいかに実現するかを考えていくことがスターキッズの役目ではないかと、最近になって強く思うようになってきている。
2018年1月
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