SFショートショートにゆきづまりを感じていた1971年当時、気分転換のためにと「小説サンデー毎日」編集者の石川喬司さんにすすめられて挑戦した時代小説は、意外にも好評。
3年連続で日本文藝家協会編の《代表作時代小説》にえらばれ、星新一の作家人生の一幕となりました。
昭和48年度版(1973)に「紙の城」、昭和49年度版(1974)に「薬草の栽培法」、昭和50年度版(1975)に「島からの三人」。
本書は、この3編をふくむ全12編を収録した時代小説集です。
時代物を書くにあたり
時代劇の映画やテレビを見ると、武士たちがばったばったと殺されるシーンがよく出てくる。
となると、その子息たちは、みな、かたき討ちの旅に出て、殺害者をやっつけなくてはならなくなる。
星新一 | 「いったい、どうなっているんでしょう」 |
ある時代物作家 | 「あれはフィクションですよ」 |
武士はめったに殺されないのだそうだ。
小説とはフィクションであることに、この私が気づかなかったとは。
(『ほしのはじまり』所収「時代物について」)
本書収録作品は、ポプラ文庫《星新一時代小説集》でも読むことができます。
2020年7月
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